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最優秀作品

「平和」という言葉の重み

中学2年 山本 真彩さん

 「平和」という言葉を辞書で調べると「戦争がなく、穏やかなさま」とあります。とても簡潔に記されています。そして実際に私の周りにあふれている「平和」という言葉。説得力のない、上辺だけのものになっているのではないでしょうか。

 私は対馬丸の名前はもちろん、戦争中、沖縄から多くの人々が疎開した事、多くの船が米軍の魚雷により撃沈された事、その結果多くの人々が犠牲になった事、初めて知る事ばかりでした。

 沈没した日本輸送船から船舶暗号書を手に入れた米軍が、暗号解読に成功し、沈められる船が急増したとありますが、対馬丸もその中の一隻です。米軍の作戦の方が一枚上手のようで、何ともじれったい気がします。対馬丸船団の航路は全て把握され、レーダー照射により追い込まれ、ついには不気味に水面下で待ち伏せられたのです。そこから撃沈、漂流生活まで一気にページが進みました。

 主人公である7人の体験から展開される撃沈の場面は、爆音とパニックから同時進行で始まりました。「海水がごうごうと滝のように流れ込んだ」や「下から叫び声のような、うわーんうわーんという不気味な音」「どす黒い夜の海がうねっていた」等の表現から、得体が知れない恐怖に包まれていく様子が伝わってきました。私がもしその場にいても、自分ならどうするか、どう思ったか、なんてとても想像がつきません。清の「選びようのない運命が目の前に迫っていた」はまさにその通りだったと思います。迷ったり考えたりする余裕はないのです。つきつけられた運命を受け入れるしかなかったのでしょう。三回ベルが鳴り、やがて垂直に沈んでいく船。海に投げ出された者達を迎え入れた一面の夜光虫。生死を分けた選択は、わずか十二分の出来事、そんな短時間であんなに大きな船が沈んでしまう事にも驚きました。

 そしていよいよ、それぞれのイカダによる漂流生活が始まりました。私は中でも高男の行動がすごいと思いました。誰もが我先にと自分が助かる事に必死だというのに、人を助ける事も船乗りの仕事だからと、拾い上げたイカダを六枚つなぎ合わせ、そこに流れてくる人々を次々と助けあげたのです。高男は十七才。高男のように、とっさにこんな行動をとれる人がいるでしょうか。私なら多分、泣いてばかりです。せっかく撃沈から生きのびても、この漂流中に力つきてイカダから離れてしまう人も多かったようです。寝てしまうと力が抜けて自然と海へ流されてしまう事も知りました。生憎の台風の為、波が大きくうねる中、主人公達が必死に生きのびる様子がとてもリアルに表現されていて、何かの映像を見ているようによくわかりました。私が感じる「怖さ」とは比べ物にならない「生きる為の気力・体力」あるいは「絶望感」そして「海の冷たさ」との戦い。私と歳の近い子供達が体験した事。かわいそう!という気持ちとは違って、実話なんだと深く受け止める事しか私にはできません。生存者二八〇名の、この対馬丸撃沈のニュースは極秘とされ、この後沖縄本土決戦が始まったそうです。

 以前、家族で沖縄旅行をした時、ひめゆり平和祈念資料館を訪れた事があります。今まで戦争について、テレビや本等の知識しかありませんでした。真っ先に思い浮かぶのは、広島や長崎の原爆です。ひめゆりについては美化されたイメージがあり、詳しくは何も知らなかったのです。資料館で、最近になって発掘されたさびた医療器具を間近で見た事。又、実際に使われていた第三外科壕が実在している事。もちろん中に入る事はできませんが、今でも奥深くひっそりと続いているそうです。夏の沖縄で、そこだけ静かな空気が流れているような気がして、みんなで手を合わせた事を覚えています。

 忘れてはいけないのは、沖縄は海と太陽、楽しい風景、でもその前に、こんなに悲しい記憶を持つ場所であるという事です。真実を知らされないまま、命を落とした対馬丸の子供達、ひめゆりの学徒隊、兵士ではない多くの人々が逃げ惑ったさとうきび畑。やがて戦争を知る人が一人もいなくなっても、確かにそうだった事。そして今も世界のどこかで、争いがある事も、忘れてはいけないと思います。

 証言の中の「生命のつながりを大事にする考えが、他の人を大事に思い、平和につながる」は心に残る一文です。

 今、読み終えて改めて思う事。「平和」という言葉を口にする前に、もっと色々な事を知らなくてはいけない。私にはまだまだ知らない事が多いはずです。「平和」という言葉は、その重みを感じずに、簡単に使ってはいけないのではないか、という事です。