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『風が強く吹いている』を読んで
高校2年 S・Nさん
僕はこの本を読むまで箱根駅伝のことなんて全く知らなかった。それどころか、長距離走なんてただ走ってしんどいだけなのに何が面白くてやるんだろう、とさえ思っていた。でもこの本を読んで箱根駅伝のことだけでなく、長距離走とは何なのか、そしてそれにかける人たちの思いを感じることができたと思う。
十人で走る箱根駅伝に、同じ竹青荘に住む、ほとんどが陸上未経験者の個性あふれるメンバーたちが挑戦する。無謀だが夢を感じた。時間は半年しかないが、長距離走は気合や根性ではどうにもならない。着実に一歩一歩焦らず積み重ねていくしかない。僕は長距離走をあまり知らなかったが、要は自分との戦いということではないか。練習は辛く苦しいもので、それにただ耐える、という肉体的なことももちろんあると思う。だが、焦る気持ちや思い通りにいかなかったり、自分の思いを表現できずに苛立つ気持ちに向き合うということから逃げることなく、自分の心に正面から向き合う、という精神的な部分が大きいのではないかと思う。またそういうことができてはじめて、ハイジの言う長距離選手に対する最高の褒め言葉「強い」に近づけるのではないか、そう思う。例えば、作中に猛者として描かれる藤岡は自分自身や物事を冷静に分析し、それを言葉にすることができる。それはおそらく自分との精神的な戦いで大いに役に立つだろう。だからこそ藤岡は「強い」のだと思う。
そして主人公たちの寛政大が十人だけで、初出場でシード権獲得という偉業を成し遂げられたのも、精神的な部分に秘密があるのではないかと思う。作中で厳しい指導が強調される東体大だが、最終的には寛政大に僅差で負けてしまう。肉体的な能力ではおそらく勝っていただろう。しかしチームメイトでもライバルであり、タイムだけが自らの存在価値という状況で、駅伝で大切な、精神的な何かが不足したのではないか。寛政大にあって東体大にないもの、それは自分のためにだけではなく、チームの他のみんなのために走る、という気持ちだと思う。駅伝が他の長距離走と違う点は、襷をつないでいくという点だ。だから他の長距離走では自分の調子だけを考えればいいが、駅伝ではプラス他のメンバーへの気持ちがあってさらに高みに向かえるのではないか、と思う。その点寛政大のメンバー達は一人ひとりがかけがえのない仲間だ。もちろん仲良しこよしで楽しくやりましょう、ではない。独りで悩みを抱えこむことなく、お互いが気持ちや意見をぶつけ合うことで精神的に成長できた。それに仲が悪くなってしまった時でも、同じ屋根の下で生活を共にしているとそのうち仲直りする。そうやって支えあい、自分のためだけでなくお互いがお互いのためにがんばれたからこその結果だと思う。そして、ハイジはそれを証明したかったのではないか。
最後に、ぼくは独りで戦うだけでなく他人がいるからこそ出せる力もある、ということをこの本に学んだ。また、この本でいう「強い」ということは何かを成すためには共通で重要なことだと思う。これからはこの本で学んだことを心にとめて、「強い」人間を目指していきたいと思う。