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『すべては音楽から生まれる』を読んで
高校3年 A・Tさん
テレビの歌番組や街のBGMで聞く最新の音楽。CDや音楽プレーヤーで聞く自分のお気に入りの音楽。喫茶店の中や歯科、眼科の待ち合い室で聞くクラッシック。毎日様々な音楽を聞くが、私は他とは違う、素晴らしい音楽を聴く経験をした。
それは昔、私が小学校低学年の頃、ピアノの発表会で聴いた、同年代の子の演奏だった。これが著者の言う、「私自身が鳴る」ということだったのであろうか。それ以前もそれからも何度か同じ曲を聴いたことがあったのだが、これほどまで聴いていて心地の良い音楽を耳にしたのは初めてだというくらい素晴らしいものだった。「出会い」である。
しかし、その音楽がどのように素晴らしいのかということは、説明し難いのである。その時、私はこの本に同じような文があったことを思い出した。著者が今までの中で一番と賛するオーケストラ演奏を体験した記憶を、
「ある一つの明確な形として他人に提示するのは難しい」と記した文である。その後の文を改めて読み返し、「すべては音楽から生まれる」の意味をようやく理解し、「すべては音楽から生まれる」のだと感じた。
その一つとして、感情とか情動というものがある。これは音楽の「クオリア(質や状態)」から生まれる。音楽の素晴らしさを形にしにくいのは、数量化できない「クオリア」が存在するからだということだろう。音楽での「なにか」のクオリアによって私は今までにない感情がつくられるのだと思うのと同時に、その感情は私だけのもので、また、他の人には私にはないまた別の感情が生まれるのだろうとも思う。音楽はクオリアによって感情を生みだし、それに加え、人とは違う感情から、「私」というものを強く感じさせるものをも生みだすのだと思う。
もう一つ、「絶対的な座標軸」という、喜びや美の基準が生まれる。音楽を聴いて生身の体で感動することは、現実を現実として自分のものにできるという。それが「生きる」ということであると著者は定義している。また、私はこの本の中で一番心動かされる文がある。
「本当の感動を知っている人は、強い。生きていく上で、迷わない。揺るがない。折れない。くじけない」
私はこの文を読んだ時、いかに音楽が私たちにとって大きなものを与えてくれるかということを身にしみて感じた。音楽から生まれるものは私たち自身なのだと。私はあの演奏がこのことを与えたのだとは正直、感じられにくい。しかし、感動した。生きていく上での大切な基盤が知らずの間に少しでもつくられているのかもしれない。そう思うと、あの音楽を聴いたことは良かったことなのだと、ただ単純にそう思う。
私はこの本の題を見た時、大げさだと思った。しかし、私の記憶の中にある、あの素晴らしいと感じた演奏を再び思い出させてくれた。「過去は育てることができる」証を自ら感じることができた。そして何より、もっと音楽が好きになれた。この感情も音楽から生まれたのだろう。