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S・Sくん
韓国は近くて遠い国…研修旅行の二日目、私は母の言葉を思い出した。距離は近くても文化は遠い国。確かにそうだと思った。
朝から現地の大学生に付添ってもらい各班でソウル市街を散策したときのことだ。わからないこと、聞きたいことがあれば積極的に距離を縮めて仲良くなろうと独りで朝から考えていたのだが、いざ声をかけようとすると急に怖くなった。理由はわからないが、言い知れぬ恐怖が私を凍らせた。自分の意志が通じなかったらどうしよう。相手を傷つけてしまったらどうしよう。そんな思いが私を殻の中に閉じ込めたのだと今になって思う。
結局あのとき、私に無かったのは小さな勇気だった。逆にあのとき私を支配していたのは外国という先入観だった。先入観が無ければ、異国の地や人々に臆することもなかっただろうし、もし私に勇気があれば韓国の人達とすぐに打ち解けることができただろう。
ところで、人が思いを伝えるのに必要なものは言葉だけなのだろうか。私はそうは思わない。では他の手段はないだろうか。そう考えたとき、私は音楽のことを思った。様々な国の人々が最も親しみやすく、一番心をひとつにしやすいものだと思う。
同じく研修旅行の二日目。私にそんな音楽の事を考えさせたのは他でもないNANTAだ。家庭にある調理器具を使って音楽を奏でる、日本人の視点から見ると一風変わったこの舞台に、私の心は動かされた。その音楽はもちろん「素晴らしい」の一言だが、私の印象に残っているのはそのパフォーマンス。言葉をほとんど使わずに人の心に伝わってくるこのショーに、私は意志を伝える方法をひとつ見出せた。
自分の気持ちを相手に伝えるために必要なものは、もちろん言葉もそのひとつだろう。しかし、それは伝えるための手段であってその根本にあるものは、やはり人の心なのだと改めて思った。相手に伝えたいと強く思えば、例え言葉が通じなくても、きっと伝わると私は信じている。
そして、相手を思いやる心が世界中に広がって欲しい。まずは人と人から、いずれは国と国が互いを思いあえば、きっと今よりよりよい関係を築けるのではないだろうか。
日本人、外国人という概念以前に、私達は同じ人間なのだから。