2020/10/23

ことばの贈り物 2020/10/23

朝から雨が降り注ぐ。夕刻には上がると聞いているが、果たしてそうなるのか?雨の日の登校は、交通渋滞で路線バスに遅れが生じる。本日も、ほんの少しだけ遅れた。もちろん、生徒の遅刻にはカウントされない。
 
さて、私は朝の生徒の迎え入れだけでなく、時間の許す限り放課後の生徒の送り出しにも立ち会うようにしている。先生方の放課後のバス乗車指導の邪魔にならない範囲で、生徒との会話を楽しむようにしている。
 
そんな中、先日こんなやり取りがあった。雑談しながら帰ろうとしている中学生数人のグループ。
「ねえねえ、来週の体育大会、みんなどう?楽しみ?楽しみじゃない?」
彼女たちは、箸が転げても笑ってしまう快活な青春ど真ん中の中学生たち。その中でリーダー格の女子生徒が、真っ先に満面の笑顔で応えてくれる。
 
「先生~、私、めっちゃ、楽しみにしてるねん!」と、快活な回答。校長、思わずニンマリ。特に「めっちゃ」という彼女の表現に、得も言えぬ体育大会に対する思いの丈を感じる。
 
「でも、雨やったら、中止になるで~。」と、少し意地悪な校長の問いかけ。
「絶対に晴れるに決まってる!」と、はっきり言いきる彼女に、
「そんなん分かれへんで~、今週末は雨みたいやし。」と、さらに嫌味な校長。
 
「先生~、私なあ、毎日テルテル坊主作ってるねん。そしてそれをなあ~、ベランダに毎日吊り下げてるねん。」と、何か大事な秘密を誰かに打ち明けるように語る少女。
「???」
「だけどなあ~、たくさん作り過ぎて、明日から、もうベランダに吊り下げる場所、無いねん。だけど、絶対ずっと作り続けるねん。そして、吊り下げ続けるねん!だ・か・ら、先生、絶対に晴れるねん!」
 
その少女の体育大会に馳せるひたむきな思いに、完全に飲み込まれている校長。
ここまで、学校行事はおろか、学年行事も実現できない中で、生徒たちはみんな、この少女と同じような思いを、きっと持っているのだろう。
 
何が何でも、実現させてやりたい……。
そう思って、少女に「先生も、実現させたいよ!」と、急に善人ぶろうとした矢先、「あっ!バスが来る!」と言って、みんなしてバス停に急いで行った。私の「善意」の言葉は、ものの見事に彼女たちの足音にかき消されていた。
 
晴れますように……。