2021/05/09

ことばの贈り物 2021/05/09

母の日の休日。いかがお過ごしだろうか。お母さまにとっては「母の日」と言っても特に改まった日ではないかもしれないが、中には、お子様からカーネーションが届けられたという方もおられるかもしれない。

私の母は既に数年前他界しており、母の日に特別な催しはない。というか、生前母にカーネーションをプレゼントした記憶がない。何とも薄情な息子である。大正から平成まで、戦乱の世をくぐりぬけ、93年の生涯を終えた母。私は決して親の真意が汲める、心優しい息子ではなかった。

思春期の私は、反抗心がきつくて、親父を否定し、おふくろは完全に無視していた。地球はいつも、自分を中心に周っているという勘違いをしていた生意気盛り。その後の人生で、辛酸をいくつも味わうのは、当然の成り行きである。

失敗しても、落ち込んでも、母親には強がっていたように思う。母親の気持ちなど全く意に介していなかった。ただ、わずかばかりに残像として今も残っているのは、いつも優しい瞳で私を見守ってくれていたこと。「信じているからね」という無言のメッセージに、時々ドキッとさせられる自分がいた。それは今も、私の心の中で生きているように思う。