2022/01/17

無常観に包まれて

本校生徒が日々使用する昇降階段。ここを上り生徒たちは校舎内に入る。本日10時より開催された「中学合格者説明会」。入学希望され、手続きが完了した小学6年生の児童と保護者の皆様が9時30分辺りから続々と昇降階段を上って、校舎内に入られる。どの顔も安堵と喜びに満ちている。

ちょうど同じ時間帯に、高校3年生の生徒たちが、ぽつりぽつりと校舎内から昇降階段を下りてくる。朝から昨日の共通テストの結果を報告し、今後の方針を話し合ったのだろう。その表情には一様に緊張感が漂い、安堵や喜びは感じられない。

私は昇降階段の下に佇み、上っていく6年生に「おめでとうございます」と声をかけながら、同時に家路につく高校3年生に「お疲れさん」と、何とか声を掛ける。そんな自分の中に、得も言えぬ複雑な感情が渦巻く。この感情は何なのだろう。
 
小学6年生と高校3年生が、校内で時間と空間を共有することは永遠にないはず。その両者がたまたま、昇降階段でほんの一瞬受験というワードで行き交う。何という偶然の交差か。こうした現実に可視化された時の移ろいに、切なさが込み上げてくる。

小6生に掛ける心からの「おめでとう」。だけど、高3生は「おめでとう」じゃないよな。じゃあ、何て声掛ければいい?古びたカバンや制服姿が物語る、残り僅かな彼らの学校生活。立派に成長した高3生を前に、ただただ言葉を失っている自分がいた。