2024/03/16

2023年度 高校卒業式式辞をお送りします 1

梅の花が咲き誇り、桜の花もつぼみを膨らませようとしている、そんな穏やかな日に、こうして第39期の皆さんと卒業の時を迎えられることを大変嬉しく思います。卒業生の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。また、今日まで影ながら支えて下さった保護者の皆様。ご子息、ご息女のご卒業、誠におめでとうございます。高いところからではありますが、ここまで本校の教育に対するご理解、ご支援を賜りましたことを篤く御礼申し上げます。ありがとうございました。

さて、卒業生の皆さん。皆さんが過ごされた本校での生活はいかがでしたか?3年、6年という時間は、長いようで、あっという間だったのではないでしょうか。本校学校長としての私も6年目を迎え、ここにおられるすべての卒業生の皆さんと入学の日からこの卒業の日まで、同じ空間と時間を過ごさせてもらいました。そして、皆さんから多くのことを学ばせてもらいました。皆さんと共に過ごせたことに感謝申し上げると共に御礼申し上げます。本当にありがとう。

さて、皆さんの旅立ちに当たり、一言ご挨拶申し上げます。私も今年65歳を迎え、そろそろ人生の答え合わせの時期となりました。40年以上前、私も皆さんと同じように、今後の人生に希望や不安を抱えながら、高校を卒業しました。先行きの不透明な未来に向かって、自分はどのような人生を歩めばいいのか。何もわからない状態でした。あれから40年以上の時を経て、私は今、自らの人生の答え合わせをしています。その中で、分かったことをお話ししましょう。

まず、人生は選択の連続だということです。「現在」というあなたのその立ち位置は、過去の自分自身の選択の結果にあるのです。それはあなたに限らず、ここにいらっしゃるすべての人に当てはまることです。これからも皆さんには、多くの選択が迫られます。あなたはどの道を選ぶのですか?どっちに向かって、旅を続けるのですか?

その中で、「道」を選択する際の「正解」ってどうすれば得られるんだろう?と思われるかもしれません。正解の道を選択する方法です。残念ながら、人生は誰しも一度キリですから、正解も不正解もなく、自分が選択した道を進むしかありません。実は、正解なんて、誰にも分からないんです。正解を教えてくれる人もいません。自分で決断して選択するのです。そしてその選択には、責任が伴います。後戻りできないこともあります。あとは、腹をくくって、与えられた環境の中で、精一杯生きる。その道を歩み続ける。その積み重ねが人生のような気がします。選んだ道の正解は、後から分かってくるものなのです。

正解がないというひとつの例を示しましょう。有名な英語のことわざに「A rolling stone gathers no moss.」というものがあります。日本語では、「転石苔むさず」。つまり「転がる石には、苔が生えることはない」という意味でしょうか。有名な諺ですから、ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、さて、この苔の生えていない「石」とは何なのでしょう。

転がる石のように、常にじっとしていないということは、落ち着きがなく、行いも不安定だから、決して褒められたものではない、と解釈することが出来ます。じっとしていて動かないことが正しい。「苔の生えていない転がる石」は、決して褒められたものではないという解釈です。

しかしながら、全く別の解釈もありますよね。「転がる石」は、世の中の変化に合わせ、柔軟に行動する態度を示している。そういったアクティブな生き方では、苔といった過去の遺物のようなものは、こびりつかない。常にバージョンアップされて新しい。その事こそが、人生を切り開く態度である、といった「苔の生えていない転がる石」を賞賛する解釈です。