2025.06.12

【校長通信】日本の伝統文化にふれる ~芸術鑑賞会を終えて~

昨日、本校では芸術鑑賞会を開催し、日本の伝統的な話芸である「落語」「講談」「浪曲」の三大話芸、そして「太神楽曲芸」を鑑賞しました。いずれも、長い歴史の中で磨かれてきた日本独自の話しの芸(わざ)であり、普段の生活の中ではなかなか触れる機会の少ない、貴重な文化体験となりました。
演目が始まる前には、それぞれの芸の成り立ちや特徴について丁寧な解説があり、生徒たちは単に芸を“見る”“聞く”だけでなく、その背景にある歴史や芸ごとの違い、演者によって異なる語り口などにも目を向けながら鑑賞することができました。たとえば、落語の「間」のとり方や、講談の張り扇のリズム、浪曲の節回しと三味線の調和など、言葉だけでは伝わらない“生の芸”の迫力に、会場は自然と引き込まれていきました。
また、太神楽曲芸では、傘の上でいろいろなものを軽やかに回す妙技が披露され、会場からは驚きと歓声が上がり、伝統の中にあるユーモアや驚きも存分に味わうことができました。生徒たちの表情を見ると、初めて触れる芸能に対して「面白い!」「すごい!」という純粋な感動と驚きがあふれていたように思います。
しかし、私はこの感動を、その場限りの「楽しかった」で終わらせてほしくありません。これらの伝統芸能は、日本が長い年月をかけて育んできた、誇るべき文化です。実際に目の前で見て、聞いて、感じた経験だからこそ、今後、皆さんが海外の人々と関わる機会があったとき、自国の文化について自信をもって語ることができれば、それはきっと、皆さんにとって大きな強みになるでしょう。そのためにも、今日感じたこと、心に残ったことを、ぜひ「自分の言葉」で表現し、伝える力を養っていってほしいと思っています。

そこで、生徒の皆さんには、 今回の芸術鑑賞会で「見たこと、感じたことを、ぜひ家に帰ってご家族に話してください」とお願いをしました。誰かに話すことで、自分の感じたことが自分の中に定着し、それがやがて“自分の知識”や“教養”として積み重なっていきます。そしてその一歩一歩の積み重ねが、自分の考えを自分の言葉で表現し、相手に伝える力、つまり「表現力」「発信力」へとつながっていくのです。
これからの社会では、自分の思いや意見を的確に伝える力がますます求められます。だからこそ、今回のような経験を、単なる“鑑賞”にとどめず、「学び」に昇華させてほしいのです。
芸術鑑賞会を通して、日本文化の深さと魅力を体感するとともに、「感じる力」「考える力」「伝える力」を育むきっかけとなってくれたなら、何より嬉しく思います。