2023/03/20

2022年度 高等学校卒業式 式辞 3

本日3学期終業式を迎えた。いよいよ新年度準備が本格化する。昨日に引き続き、式辞の続きをお送りしたい。
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人は誰しも、自分が周囲から、どう見られているかということが、気になります。周囲を気にするのはあなただけではありません。でも、本当に大切なこと。それは、ホントの自分を知ることです。ホントの自分を探り当てることです。そのためには、自分はいかに生きたいのか。自分はどうしたいのか。それを率直に魂に問いかけ続ける以外に道はないと思います。

ホントに自分がしたいことを自分に問いかけ、自分を認め、ホントの自分に出会おうとする旅を始めましょう。本校を巣立ち、今後いろんな経験を積まれながら、あなただけのホントにしたいこと、ホントのあなたに出会う旅を続けて下さい。それを探り当てるには、まだまだ時間と経験が必要です。どうかこれからも、自分の意志を大切に、そして正直に生きてください。

最後に長田弘氏の詩を一篇ご紹介し、私の挨拶とします。

「あのときかもしれない 四」      
長田 弘 

「遠くへいってはいけないよ」。子どものきみは遊びにゆくとき、いつもそう言われた。いつもおなじその言葉だった。誰もがきみにそう言った。きみにそう言わなかったのは、きみだけだ。
 「遠く」というのは、きみには魔法のかかった言葉のようなものだった。きみにはいってはいけないところがあり、それが、「遠く」とよばれるところなのだ。そこへいってはならない。そう言われれば言われるほど、きみは「遠く」というところへ、一どゆきたくてたまらなくなった。
(中略)
ある日、街のそとへ、きみはとうとう一人ででかけていった。街のそとへゆくのは難しいことではなかった。街はずれの橋をわたる。あとはどんどんゆけばいい。きみは急ぎ足で歩いていった。ポケットに、握り拳を突っこんで。
(中略)
けれども、どんなに急いでも、どんなに歩いても、どこが「遠く」なのか、きみにはどうしてもわからない。きみは疲れ、泣きたくなり、立ちどまって、最後にはしゃがみこんでしまう。街からずいぶんはなれてしまっていた。そこがどこなのかもわからなかった。もどらなければならなかった。

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本日はここまで。明日は詩の続きを含め最終回である。