2023/03/21

2022年度 高等学校卒業式 式辞 4

祝日のひと時。本日式辞の最後をお送りしたい。長田弘氏の詩の続きからである。
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きた道とおなじ道をもどればいいはずだった。だが、きみは道をまちがえる。何辺もまちがえて、きみはわッと泣きだし、うろうろ歩いた。道に迷ったんだね。誰かが言った。迷子だな。べつの誰かが言った。迷子というのは、きみのことだった。きみは知らないひとに連れられて、家にかえった。叱られた。「遠くへいってはいけないよ」。
子どもだった自分をおもいだすとき、きみがいつもまっさきにおもいだすのは、その言葉だ。子どものきみは「遠く」へゆくことをゆめみた子どもだった。だが、そのときのきみはまだ、「遠く」というのが、そこまでいったら、もうひきかえせないところなんだということを知らなかった。
「遠く」というのは、ゆくことはできても、もどることのできないところだ。おとなのきみは、そのことを知っている。おとなのきみは、子どものきみにもう二どともどれないほど、遠くまできてしまったからだ。
子どものきみは、ある日ふと、もう誰からも「遠くへいってはいけないよ」と言われなくなったことに気づく。そのときだったんだ。そのとき、きみはもう、一人の子どもじゃなくて、一人のおとなになってたんだ。


長田氏の詩は以上です。今後とも本当の自分と出会う旅を続けてください。繰り返しますが、それは自分自身の魂に、自分自身で問いかけることから始まります。

あなたは、どうしたいのですか?
あなたが心から求めているモノは、何ですか?
あなたは、これからどのように生きるのですか?

最後までご清聴、ありがとうございました。

これからの皆さんの人生に幸多きことを祈念して、私の挨拶といたします。さようなら。

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以上である。明日からは中学生の式辞をお送りしたい。